【唐津人】移住者に託された移住促進事業
三笠旬太さん
青森県八戸出身。三笠さんは母方の実家が空き家になっていたことをきっかけに、唐津へ移住してきた。当時はまだ、移住という認識はなく、現在勤めるNPO法人「NetworkStationまつろ」で移住促進事業を担当するようになって、僕も移住者なんだ、と初めて気づいたという。
三笠さんが唐津へ移り住んだのは関東の大学を卒業した2010年春。
「大学3回生のときにメキシコへ1ヶ月ほど旅行した際に刺激を受け、ゆくゆくは日本語教師として海外で働きたいと思ったんです」
大学院へ進学するかどうか迷った末、都会と比較した際の生活コストの安さを鑑み、唐津から福岡の専門学校へ通うことにしたという。専門学校を卒業し日本語教師の資格を取得したが、そのまま海外へ渡航はせず、語学力を養うため、フィジーへの語学留学を経て、ワーキングホリデービザと就労ビザを活用し、ニュージーランドに約2年間住んだ。
ニュージーランドでは日本での飲食業のアルバイト経験を活かし、日本食レストランで働き、ホールスタッフからマネジメントまで、業務全般を担っていた。
再び唐津へ戻ってきたのは2016年春。
「正直、唐津に住んでいたのは海外に住むまでの腰掛けで、まさかまた唐津へ戻ってくるとは思ってなかったですね。でも、なぜか帰ろうと思った先は生まれ故郷の八戸でなく唐津でした」
<唐津で出会った友人も多い>
自由度の高い唐津での生活を、海外での生活と重ねていた部分があったのかもしれない。三笠さんの話を聞いていると、そんなふうに思った。三笠さんにとって、唐津に住むことも海外に住むことも等しく、ただ「知らない街に住むことの新鮮さ」を心から楽しんでいるように感じた。移住とは、ある種の冒険なのかもしれない。いつだったか、「だれの心にもトムソーヤが住んでいる」と聞いたことがある。わたしたちは大人になるにつれて、上手な言い訳を使ってはトムソーヤを操るけど、三笠さんは濁ることなく、いつまでも純朴に、自分の中にいるトムソーヤ(冒険心)に耳を澄まし、真っ直ぐ向き合っているのだろう。
以降、いつかまた海外で暮らしたいと考えることもあるが、狭い街ならではの人の繋がりや情にほだされ、唐津から離れることなく、現在に至っているという。
三笠さんは移住促進事業の一環として、移住希望者のサポートも行っている。相談の窓口はもちろんのこと、お試し移住用の住居の管理や、ニーズに合った移住プランの提示などサポート内容は多岐にわたる。時には要望に応じて観光案内をすることもある。
<移住物件を一緒に探すこともある>
「実は移住希望者の中には、唐津を初めて訪れるという人も多いんです。僕自身も移住者だから、一緒に観光することで移住希望者と同じ目線で唐津を見ることができたり、今まで知らなかった唐津の新たな魅力を発見できたりして、新鮮で楽しいですね」
三笠さんが移住促進事業に携わり始めたのは今年の春から。これまでに東京や大阪など、たくさんの移住希望者に会ってきたという。
「移住を検討している人の数だけ、移住したい理由があるように感じます。まずは話を聞き、それぞれの思いや考えをくみ取ることに一番の重きを置いています。また、移住相談をする側とされる側という関係性に立つのではなく、気軽に何でも相談できる、唐津の友人と思ってもらえたらいいなと思っています」
<「まつろ」が運営するコワーキングスペース内での仕事風景>
誠実で真摯な三笠さんならではの向き合い方だ。加えて、三笠さんは唐津在住の外国人を対象に日本語教室の講師としてボランティアも行なっている。今までの経験を活かして、総合的に移住支援に取り組むことで、国内外問わず連鎖的に移住する人が増えていけば嬉しいという。
「僕は周囲から移住者だと言われますが、自分ではあまり移住してきたという感覚はないかもしれません。ただなんとなく、気づいたら今こうして、唐津にたまたま住んでいるという感じです」
唐津の移住促進事業を担っていたのはなんと青森県八戸出身の青年であったのだ。三笠さんのように、肩肘を張らない自然な移住のスタイルが増えていくと、人の流れも変わっていくのだろう。ひねもすのたりと生きる三笠さんに引き寄せられて、これから先、移住を決めるひとも出てきそう。
「唐津で待ってます!」
【Information】
NPO法人Network Stationまつろ
〒847-0013 佐賀県唐津市南城内2‐6
E-mail karatsu@matsuronet.com
移住専用電話 090-2507-0303
http://matsuronet.com/otameshi/
https://www.facebook.com/karatsuswitch/
コラムニスト:ムギ
1991年唐津市生まれ。
バックパッカーや会社員を経て、2017年にUターン起業しました。
現在は「ハトムギソウ -鳩麦荘-」の屋号と古民家を改装した昭和レトロな空間を使って、萬宿(ちいさな素泊まり宿)と書肆(しょし)(リトルプレスと詩集中心の書店)の運営をしています。
毎週月曜・木曜はFMからつパーソナリティ、ときどきEDITORS SAGAでライターもしています。
肩肘を張らない「心地よい生活」をモットーに、「よそ者と地域を繋ぐ勝手口」を目指してゆるゆる唐津に棲息中。
ホームページ︰http://sagaguesthouse.com/