唐津暮らし〜ここちよい生活のはじまり

唐津の暮らしvoice list

人生最後まで楽しく生きる

人生最後まで楽しく生きる|唐津で自分らしい生き方

介護事業所 合同会社MUKU代表
佐伯美智子さん

皆さんは『カンタキ』という言葉をご存知ですか?カンタキとは、看護小規模多機能型居宅介護施設の略称で、主に通い、泊まり、訪問看護、介護、リハビリ、ケアプラン、のサービスを一体化して、一人ひとりに合わせた柔軟な支援ができる事業所のことを言います。今回は、唐津市浜玉町にある合同会社*MUKUで代表をされている、佐伯美智子さんを取材しました。

 

 

 

佐伯さんは、福岡県出身現在3人の子育て真最中で、一般の人が抱いている介護施設のイメージを変える為、様々な取り組みを通して利用者さん1人ひとりに寄り添いながら、より豊かな人生を送れる場づくりを大切に、介護施設の枠にとらわれない活動をしています。

 

 

 

*MUKU:会社の登記上の表記名。『むく』は介護施設名となっている。

 

 

 

佐伯さんが介護の道を志し始めたのは、中学生の時脳性麻痺を患う8歳離れた少女との出会いがきっかけでした。彼女は少女と一緒に遊ぶうちに、治療の一環として作業療法が有効であることを知り、高校卒業後福岡の専門学校に通い資格を取得します。その後5年間福岡の病院で働きましたが、病院勤務では治療以外のサポートが出来ない現状や、患者さん一人ひとりと向き合う余裕がなく、本来目指していた人との関わり方の違いに矛盾を感じたのでしょう。日本を離れ、心機一転作業療法士以外の経験もしてみようと、佐伯さんは旅へ出ました。

 

 

 

彼女は2年間バックパッカーで海外を転々とし、結婚と妊娠を経て長男が3歳の時、趣味であるカイトサーフィンができる唐津へ移住。唐津市内の病院で7年間働きましたが、『もっと生活の場で人を人として見たい』という想いを実現するため、2016年職場の同僚2人でMUKUを立ち上げ、翌年4月からは専門職のスタッフ6人を含めアルバイトを合わせた14人の体制で、子連れ出勤OK、介護資格不要を掲げてスタートしました。

『むく』のスタッフとあおぞら胃腸科の先生、看護師さん

『むく』のスタッフとあおぞら胃腸科の先生、看護師さん

むくは、母親にとって子連れ出勤出来る有り難い職場であり、介護が必要な利用者さん達が日常生活を送る空間。子供達は利用者さん達に見守られながら成長していく。むくだからこそ作り出せた環境であり、佐伯さんの長年の想い『生活の場で人を人として見たい』は実現したのです。1年後スタッフの子供達が成長すると、賑やかな施設内が少しもの寂しくなったのを機に、2018年からは赤ちゃんボランティアを始めました。

赤ちゃんボランティアも行う唐津介護施設むく

1歳のあきなちゃんに利用者さんが読み語りをしている様子

赤ちゃんボランティアとは0歳から3歳までの親子が有償ボランティアとして、利用者さんと一緒に過ごす活動です。取材当日は、生後7か月と1歳のお子さんを持つ親子2名ずつが参加していました。参加しているお母さんに活動について話を聞くと、「ここに来ると癒されるし、利用者さんが子どもの名前を呼んでくれるのがうれしい」と答えてくれました。

 

 

佐伯さんは赤ちゃんボランティアについて、「利用者さんが赤ちゃんと触れ合っている時は、不思議と認知症の人も本能的に赤ちゃんの存在を理解し、ふだんお世話をされている立場からしてあげる立場に逆転する。介護の技術では補えない人として大切な部分を引き出してくれる存在。母親にとっては、育児で家にこもりがちになるのを防ぎ、社会に戻るきっかけのひとつにもなる」と教えてくれました。赤ちゃん達がむくに来てくれることで、利用者さんの生活にもメリハリが出来るだけでなく、地域間での多世代交流、日ごろ育児に追われているお母さん達の気分転換の場としても、利用されていました。

唐津市中町のスナックZAZABYにて

施設に入居するとどうしても外へ出る機会も少なくなり、夜お酒を飲みに行く事なんてほとんどありません。そこで小規模多機能連絡会のメンバーと協力し、懇親会で行った唐津市中町のスナックZAZABYにて、「利用者さんも自分達と同じようにお酒を飲む場を作ってあげたい」と、2018年11月から3ヶ月に1度5つの事業所が合わさって、KAIGO BARを始めました。参加者は医師会、地域の病院スタッフ、利用者さんとその家族を含めた30名から多い時は60名程集まりました。

 

 

「ほとんどのお年寄りは、カラオケのマイクを持ったらはなさなくなり、中には着物や宴会気分でお面をかぶり踊りだす人もいる。普段介護を受ける側の人は、なんら自分達と変わらない存在。ふだん自分達が当たり前にしていることを生活の一部として、自然の流れの中で取り入れたかった」と佐伯さん。佐伯さんは、出来るだけ利用者さん達に物事を諦めるのではなく、人生最後まで楽しく自分らしく生きて欲しいと強く思っています。

目標は唐津に多世代が集う新しい場をつくること

彼女には次の目標があります。それは多世代が集う新しい場をつくることです。

 

 

普段はなかなか接点がない高齢者、発達支援の子、放課後デイの子達を一緒にすることで、良い相乗効果が起こせるのではないかと言います。そのためには介護業界だけでなく他業種との連携が必要であり、実現にむけ現在進行中とのことです。
彼女がスタッフTシャツに込めた想い、『自分らしく生きる』そのメッセージは佐伯さんの生き方そのものでした。

 

 

佐伯さんは、本当の意味での多様性と言われる場をつくりたいのではないでしょうか。それは、広い視野を持った子供達の教育、学校とは違った学びの場になるかもしれません。彼女の挑戦は、介護のイメージを変えるのはもちろん、誰もが自分らしくいられる居場所として今後必要となる気がしました。彼女の理想が形になった時、『自分らしく生きる』ことは、今ほど難しいことではなくなっているかもしれません。

 

 

 

※尚現在(2021年3月)KAIGO BARは、新型コロナウィルスの影響や高齢者の感染予防を考え実施していません。

【Information】

合同会社MUKU
住所:〒849-5103佐賀県唐津市浜玉町大江49-1
電話番号:0955-58-8922
FAX:0955-58-8925
WEB:http://muku-llc.com
info@muku.llc.com

唐津移住コラムニスト:AYAKOさん

コラムニスト:AYAKO

3 児の母。埼玉県出身 結婚を機に唐津に移住、現在は子育てをしながら、 佐賀新聞の地域リポーターとして、唐津で頑張っている 団体や小学生、移住者を中心に、月 1 で記事を担当。 そのほか、小学校の放課後遊びのボランティアスタッフや、 読み聞かせ等、地域の子供達の育成に取り組む。 唐津出身ではない、他県から来た自分だからこそ見える、 新たな唐津の魅力を、発信していきたいと思います。

唐津移住者コラムをFacebookでいいね

【この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします】

facebookページでは最新の情報をお届けします。