移住はゴールではなく始まりの一歩
斎藤麻以子さん
NPO法人唐津Switch 空き家コーディネーター
神奈川県横浜市出身
2021年の10月に東京から唐津へIターン移住し、NPO法人唐津Switchで空き家コーディネーターとして地域課題を解決する仕事に携わる斎藤さん。今回は、そんな斎藤さんに、NPOでどんな仕事に取り組んでいるのか。移住して感じた唐津暮らしのリアルについてお話をお伺いしました。
Q. 移住前はどこでどのようなことをしていましたか?
移住前は色々な仕事を経験してきましたが、保育士を一番長くやっていました。また、長期の休暇をとってベビーシッターの仕事を頂いてアメリカに行ったり、ワーキングホリデイでオーストラリアとニュージーランドでも生活していました。帰ってきてからも、あちこち行っていましたがその間に保育士じゃなくてもいいんじゃない?と思いはじめ、海外で知り合った方との縁で野沢で外国人と関わりながら働いていたこともあります。これまでも海外や国内各地に行ってはいましたが、拠点はずっと横浜にあって、行っては帰るの繰り返しだったので、ひとり暮らしをしたいなと思い東京でひとり暮らしをしていました。
Q.移住のきっかけは何ですか?移住を検討し始めた時期を教えてください。
東京でひとり暮らしをしてみて、東京のオフィスで働きましたが正直性に合わなかったんです。やってみて分かったことなのでやった後悔はないけどやっている時は結構鬱々としていて、コロナもあって誰とも会えないし、仕事と家の行き帰りしかしてなくて、仲の良い友達は地方にいるし、連絡を取るのもオンラインだったので東京じゃなくても良いよねと思ったのをきっかけに2020年の12月頃に移住を考えはじめました。
Q. 移住の決め手はなんですか?
もともと移住に携わる仕事をしてみたいという軸がありました。実家にも帰りたいので空港から遠くない場所で人口もあまり少なすぎない町がいいなという希望があり、色々見て足を運んだ結果やってみたい仕事と立地の条件が合致したのが唐津でした。唐津は、福岡まで1時間で行ける場所にあり、人口12万人の地方都市です。海も近くて自然に囲まれていて私の希望にとても近かったです。最後は直感で決めました。
Q.移住するまでの流れを教えてください。移住するために準備したことはありますか?
移住のことを調べていたら移住の支援をしている「NPO法人ふるさと回帰支援センター」を知りました。東京の有楽町にある「ふるさと回帰センター」には各都道府県の相談ブースがあり、私は大分、宮崎、福岡、佐賀、山口、岐阜の相談ブースに予約して行きました。どこのブースの人も親切だし自分の知りたい事は全部そこで教えてもらえました。その中でも佐賀県に絞った理由は、さが移住サポートデスクの矢野さんがとても親身に相談に乗ってくださったことが大きかったと思います。その後、まず初めに佐賀県の玄海町に行き、現地の方に色々案内してもらいました。また、唐津への移住サポートを行っているNPO法人唐津Switchが近くにあるから行ってみたらと矢野さんが紹介してくれて移住コンシェルジュの三笠さんに移住相談をしました。
Q. 移住するにあたって大変だったことはなんですか?
移住するにあたっていろんなところに直接足を運び相談して調べましたが、それは全く苦じゃなく楽しかったです。前職をやめてから移住するまでの期間が短かったので引っ越しの準備が大変でした。
Q. 唐津での暮らしはどうですか?
まずは自然環境がとても良いです。海があって山があって。でも唐津の良さは夏な気がしているのでまだ味わえていないかもしれません。
仕事のスタンスとか人との距離の取り方はやっぱり東京にいた時とは違うなと感じています。
Q. どんなところに住んでいますか?
東京にいるときはアパートでひとり暮らしをしていましたが、今は鏡山という唐津の街が一望できる山の麓にあるシェアハウス根の家に住んでいます。お試し移住施設にもなっているので根の家は、いろんな人が出入りするところです。住民との交流もあって庭でBBQをしたり、季節の行事に合わせてみんなで恵方巻きや鍋を一緒に食べたり、みんなで旅行したりコミュニケーションをとっています。移住したばかりで知り合いが少ない環境にあってもシェアハウスだと家の中にコミュニティがあるのでいいなと思っています。
根の家の住民とごはんを囲んでいる様子
Q. 休日はどのように過ごされていますか?
唐津からは九州内の他のエリアにもアクセスがしやすいので、休日は車で佐賀県内や長崎、熊本、福岡、大分などに良く出かけています。
Q. 唐津のお気に入りのスポットはどこですか?
家の近くを散歩するのが好きです。散歩路には畑や田んぼ、鏡山、半田川など自然豊かな道が続いていて、暖かくなったら川原でピクニックもいいねと話しながら良く歩いています。帰りにはお花を摘んで根の家に飾ったり、車だと通りすぎてしまうけど、歩いていると小さな細かいところが見えるので、そうゆうなにげない散歩の風景がお気に入りです。
散歩途中の斎藤さん
Q. 地域とのつながりはありますか?
はい、近所の人がミカンやイチゴをくれたりします。あとは根の家がある地区の行事で観音様のお祭とか、くんち祭に参加させていただきました。
くんち祭は厳かな感じでしたが、観音様のお祭りは割とわいわいしていました。途中から出席したので見ていない部分もあると思いますが。私は雰囲気的にはくんち祭の静かな感じが好きでした。
根の家がある矢作地区の行事
Q. どんな時に唐津に移住して良かったと思いますか?移住後に感じた唐津の魅力はなんですか?
自然の近さは心のゆとりになっていると思います。唐津の魅力は、ご飯や野菜が美味しいところですかね。小さな直売所で野菜が買えることや職場が海に近いので海辺でお昼ご飯を食べれることも魅力に感じています。他にも、自分で事業を始めている人や社会課題に取り組む人が多いので、日頃からとても刺激を受けています。もし何か挑戦したいことや、やりたいと思うことがある人には良い環境だと思います。
唐津の海でSUPを楽しむ斎藤さん
Q. 唐津に来て驚いたこと、移住前と移住後のGAPはありましたか?
驚いたことは、仕事柄もあると思いますが、行政との距離がとても近いということです。東京の時は引っ越しをするときや仕事を辞める時しか市役所に行かなかったんですが、唐津に来てからは唐津の空き家課題に取り組んでいるので行政のさまざま部署と関わりができ、これまでにない経験をさせてもらっています。
Q. 移住して困ったこと、不便だったことはありますか?
困ったことは住んでいる家が寒いことです。東京の家は寒くなかったので古民家の寒さに驚きました。ご飯が美味しくて太ったことにも困っています。このままだと夏も遊べないかもしれません。(笑)不便なことは今住んでいる家が中心街から離れた場所にあるので、飲みに行ったら帰れないことです。飲みに行って帰るのに代行でお金がかかるのが当たり前という環境で育っていないのでもったいないと思ってしまいます。それは少し不便だなと感じていますが、それ以外は特にないです。
Q. 空き家コーディネーターの仕事はどんな仕事ですか?どんなときにやりがいを感じますか?
NPO法人唐津Switchで空き家コーディネーターとして働いています。Switchでは移住と空き家の相談窓口を行っていて私は、空き家を流通に載せ移住者の住居の選択肢を増やそうというミッションに取り組んでいます。空き家の相談窓口では空き家の所有者さまの相談をお聞きし、空き家バンクや活用方法をご紹介したり専門家にお繋ぎしています。相談窓口以外にも空き家所有者さまへ向け、空き家について知ってもらうためのセミナーを開催したり、各地の民生委員会、行政連絡委員会に参加し私たちの活動を周知し、地域との繋がりを作っています。今の仕事は、東京にいた頃に比べて自由度が高く働けていて、課題解決をするために自分で考え、直接的に行動できているのでやりがいを感じています。
空き家コーディネーターの仕事風景
空き家を視察している様子
Q. 今後取り組みたいこと・目標を教えてください。
毎日自分と周りの人が幸せで楽しく過ごしていればそれでいいんですよね。
やりたいことはたくさんあるけど今は、自分のなかでちょうどいい暮らしのバランスを取れていないからそこのバランスをうまく取れるポイントを修正を加えつつ見つけたいなと思います。あとは、自分が何かやりたいと思ったときのために準備をしておきたいなと思っています。
Q. 移住を検討されている方へメッセージ・アドバイスをお願いします。
私の場合は移住を検討しはじめてから自己分析をしてみて、自分はどこにいても良いと思えているのでそんなに抵抗なく移住をしていますが、それは人によると思うので何かムズムズしている人がいるなら一度調べてみるとか、その場所に移住をするかもと思って実際に行ってみると移住に目が向いて今の生活が楽しくなる可能性もあると思います。なにかもやもやしているなっていう人がいたらまずはちょっと動いてみても良いかなって思っています。
【Information】
NPO法人唐津Switch 移住と空き家の相談窓口
住所:佐賀県唐津市南城内2-6 電話:090-2507-0303 メールアドレス:karatsuswitch@gmail.com
営業時間:9時~17時 定休日:土日祝日
空き家コーディネーターWEBサイト:https://karatsu-switch.com/akiya/
唐津SwitchFacebook:https://www.facebook.com/karatsuswitch
コラムニスト:三笠旬太
青森県八戸市生まれ。大学卒業後、母親の実家がある唐津市へ移住。その後、海外生活などの経験を経て、唐津市から委託を受け移住支援の取り組みを行なっているNPO法人唐津Switchへ入職。
移住希望者の気持ちに寄り添った移住サポートや古民家を活用したシェアハウスの企画・管理、ローカルコミュニティの運営などを行なっている。唐津に住んでトータル9年。趣味は、登山・旅行・音楽。