唐津暮らし〜ここちよい生活のはじまり

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憧れの地、唐津で歩む作家人生

憧れの地、唐津で歩む作家人生

谷上(たにがみ)ひかるさん

2019年5月、旧唐津銀行周辺にて行われたイベント「HanaMarche(ハナマルシェ)」(※)へ足を運んだ時のこと。会場に入ってすぐ、熱心に手元を見ながら作業をしている女性が目に入り、私は思わず「なに作ってるんですか?」と声をかけました。
彼女の名前は谷上ひかるさん。唐津焼がきっかけとなり約700km離れた和歌山県紀の川市から唐津に移住してきました。窯元での勤務経験を経て、現在は切り絵作家として活動しています。彼女と唐津の出会いから現在の暮らしについてうかがいました。

 

幼い頃から図工の授業など『作ること』が好きで、高校での選択授業や部活動で様々な美術にふれました。中でも陶芸に関心を持ち、卒業後は陶芸の専門学校に進学しました。

 

在学中、京都の陶器市に出かけた谷上さん。そこに出店していた九州の卸屋さんで唐津焼と出会います。その瞬間「これをやっていきたい!」とビビッと感じて、「将来九州に住む!」と決心。地元近くの窯元での勤務を経て、2017年春に念願の唐津へ足を踏み入れました。
谷上さんに唐津焼の魅力を聞いてみると「わびさびを表している作風。作者の指の形がついているものなど、かっちりしているだけが全てではないと感じる。機械的、工業的にだけ作るのではなく、蹴ろくろを使うことにより人の息遣いが作品に表れている。」と話します。谷上さんが唐津へ訪れた時の感動を「アイドルファンがそのアイドルのゆかりの場所に行って興奮して喜ぶような感じ」とワクワクした口調で語ってくれました。

 

移住後すぐに唐津の窯元で働き始めた谷上さん。大好きな唐津焼を学ぶ喜びを感じながらも、表現者として『より自分が素直に表現できる方法』を深く考えるようになりました。悩んだ末に高校の部活でやっていた切り絵で表現してみたいという答えに行き着くように。しかし「これまで学んできたことを手放していいものか」という葛藤もあったそうです。そのことを唐津焼を教えてくれていた先生に相談したところ「やってみたら」と谷上さんの背中を押してくれたのだそうです。その一言で悩みも吹き飛び、自信をもって切り絵作家としての活動を始めるようになりました。

 

切り絵の魅力について聞いてみると、「線を描いて切る。複雑でなく、自分が表現したいことをすぐに表現できる」そう語る彼女の表情はとても晴ればれしています。

谷上さんは2020年のハナマルシェではキービジュアルとなる切り絵作品を手掛けた

2020年のハナマルシェではキービジュアルとなる切り絵作品を手掛けた

もう一つ、谷上さんが移住して感じた魅力が唐津にありました。それは、唐津で暮らす人々の温かさです。
移住前は、地方でのどかな雰囲気の人たちがいるのだろうとイメージしていました。しかし暮らしの中で出会う人々は個性が強いと感じたそう。住んでいる呼子町で出会う奥様方は「姉御肌で一緒にいると楽しく、愛情を感じる」と話します。また唐津最大のイベント「唐津くんち」にて知人宅でのふるまいに招かれたことは強く印象に残り、ひき山だけでない、その町ごとに代々受け継がれるコミュニティや祭りに関わる人々の熱い思いを知ったと話します。

谷上さんは唐津くんちのコミュニティや祭りに関わる人々の熱い思いを知りました

唐津くんちにて

故郷から遠く離れた唐津では知人も多くなかったはず。どうやって唐津の人とのつながりができていったのか聞いてみると、「唐津では自己アピールするとけっこう拾ってくれる。一つのつながりができたら新しいつながりがどんどんできていくことにびっくり。自分を出したら助けてくれるなというのをめっちゃ実感します。」
このコラム取材当日も、私と合流後すぐに知人と遭遇。楽しそうに話すその場所には、まるで谷上さんが小さい頃からお互い知っているご近所さんのような、温かい空気が流れていました。唐津の人に温かく見守られ、谷上さんもその繋がりを大切にしている、すてきな関係が垣間見えました。

 

このような日常生活やお祭りを通して作られていく、唐津の人々とのつながり。そこから感銘を受け、谷上さんのなかに湧き出てくる感謝の気持ちは作品作りの原動力ともなっているのだそうです。

谷上さんが小さい頃からお互い知っているご近所さんのような、温かい空気が流れていました

取材当日、待ち合わせ後すぐに知人と遭遇

「これからも自己表現をして、作品作りでも人との交流においても『嬉しい』とかプラスの感情を伝えることができればな、と思う」
憧れの地、唐津で様々なものを見て経験することで、彼女に湧き出てくる豊かな感情をこれからも作品にしていくことでしょう。どんな作品が生まれ、どんな作家人生を歩んでいくのか。彼女の今後がとても楽しみです。

谷上さんの憧れの地「唐津」で様々なものを見て経験し作品作りに励みます

干支を題材にして中国の切り絵「剪紙(せんし)」を作成(2019年)

※HanaMarche(ハナマルシェ)
一般社団法人ジャパン・コスメティックセンター主催。2017年より唐津で行なわれている美と健康をテーマにしたイベント。

【Information】

インスタグラムで作品を見ることができます。
@hikarutanigami
https://www.instagram.com/hikarutanigami/

唐津移住コラムニスト:岡部寛子さん

コラムニスト:岡部寛子

唐津で生まれ育ち進学を機に東京へ。2017年にUターンしてから「唐津ってこんなにいいところがたくさんあるんだ!」と再発見。唐津の人がもっと唐津を楽しく過ごせる何かをしたいと思い立つ。まずは自分にできる小さいことから取り組もうと朝読書会の開催やレンタルスペースの運営等を行っている。湊町にあるドームハウス唐津の管理人。健康オタクで趣味は唐津の健康・美容スポット巡り。

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