縁むすびのゲストハウス
唐津ゲストハウス少女まんが館Saga館主 池田愛子さん
唐津市出身。高校を卒業後、京都の大学に進学。卒業後地元に戻り派遣社員として働いた後、やりたいことをやろうとピースボートで世界を一周。帰国後、本に関わる仕事がしたいと上京し中途採用で出版社に就職。
憧れの出版業界に入ったものの会社の倒産や事業縮小によるリストラなど、波乱万丈な道を歩みフリーランスへ。その後唐津へ戻り、編集・ライターの仕事を続けながら「唐津ゲストハウス少女まんが館Saga」(通称:じょまさが)をオープンさせました。
東京で憧れの仕事に携わりながら何故唐津に帰りたいと思ったのでしょうか。
「きっかけは東日本大震災ですかね、将来について考え始めました。本に関わる仕事がしたくて上京したので、別に東京に行きたかったわけではないんです。このまま東京での生活を続けている姿をイメージ出来なくて、地元が好きだから唐津に帰りたいと考えるようになりました。じゃあ唐津に帰って来て何をしようか。唐津でも編集・ライターの仕事は出来る。でもそれだけではどうだろうと色々考えました。」
そんな中で池田さん自身がゲストハウスに泊まったり、シェアハウスに住んでいた経験もあり、当時唐津にはまだなかったゲストハウスをつくれたらいいなと思うようになったそう。
「唐津でゲストハウスを作るのにライバルはどこだろうって考えたら福岡だなって。唐津って福岡から日帰り出来ちゃうんですよね。だから、唐津に泊まる意味がある場所にしたい。『目的地になれる宿』をつくりたいと思ったんです。」
他のゲストハウスとの差別化。自分のやりたいことはなんなのか。考え続けて至ったのは自身が大好きな少女まんがをコンセプトとした宿。
そこで仕事で縁のあった東京都あきる野市にある「少女まんが館」に相談。のれん分けをしてもらい、現在の形が出来上がりました。
2階の本棚にはジャンル分けされた2000冊近いまんがたち。池田さんが好きな歴史ものが多いそう。1階の共有スペースの本棚には月替わりでテーマを決めてチョイスし、コーナーをつくります。
2階の本棚。2000冊近い蔵書が並ぶ。
1階の共有スペースと毎月変わるテーマ本棚。
宿泊スペースにはお父様やお兄様を中心に、みんなで手づくりしたという2段ベッドが4つ。ベッドの脇の世界地図と日本地図は宿泊者の方がどこから来たのかピンを刺してくれます。
2段ベッドは秘密基地のよう。
宿泊せずに、まんが図書館として喫茶利用も可能。唐津焼の器でお茶を飲んだり、週替わりのおやつは池田さんの手づくりです。期間限定の唐津産レモンを使用したレモネードも人気。宿泊者の方は希望すれば500円で池田さん手づくりの朝食も頂けます。地元の食材や、唐津焼の器にこだわりがあり、目でも舌でも唐津を堪能できます。
朝食は宿泊者限定で提供。
ここを通してつながるお客さんも多いそう。お客さん達とオンライン飲み会を行った時には、知らないお客さん同士が意気投合し、コロナが収束したらお茶をしようという話になったり、まんがを読みに来た小学生の女の子同士が文通を始めたり。
唐津でゲストハウスをやっていなければ出会えなかったり、縁をむすぶことが出来なかった人たち。自身やじょまさがを通じて新たな出会いがあり、また出会いを提供できることをとても喜んでいることが笑顔から伝わってきました。
4月に行った、年間パスポートや唐津のよかもんを返礼品としたクラウドファンディングは大成功。じょまさがを守りたい沢山の人が力を貸してくれました。それもすべて出会いを大事にしたこれまでの積み重ねがあってこそ。ここでも池田さんは、協力してもらった唐津焼の作家さんや企業の方々とクラウドファンディングに参加してくれた方をむすんでいます。
取材の中でよく聞いたのは「私はご縁にめぐまれて」という言葉。じょまさがを作るにあたり、協力してくれた沢山の方々。
友人の設計士、イラストレーター、陶芸家、デザイナー、カラーコーディネーター…。そして工事着工の前から、唐津の人たちも沢山力を貸してくれたそうです。いつも真摯に対応してくれた唐津保健福祉事務所の方々。自社の物件を押し付けることなく「せっかくですから物件探しを楽しんで下さいね」と声をかけてくれ、一緒に間取りも考えてくれた不動産屋さん。まだ無料見積もりの段階なのに、図面を起こしたり補助金申請にも心を配ってくれたリフォーム会社さん。
しかしなんの努力もなくぼんやりと生きている人に「ご縁」はやってくるのでしょうか?オンリーワンであろうとする発想力、やりたいことを形にする行動力、人に対する心遣い、そんな魅力に引き寄せられて自然と池田さんの周りには人が集まってくるのだろうと思いました。
昨年行った鮎BBQ。30名程の縁をむすんだみなさんと。
池田さんにとって唐津暮らしとは何なのでしょう。
「唐津ってふとした瞬間に見える景色が綺麗ですよね。松浦川の水面がキラキラしてるのもそうだし、舞鶴橋からの唐津城とか、海も山もあって自然豊かで、私にとって深く息が出来る場所ですね。」
やりたいことのために一度は離れた地元「唐津」。今度はその「唐津」でやりたいことを見つけた彼女。
あなたも池田さんと縁をむすびに「唐津ゲストハウス 少女まんが館Saga」へでかけてみませんか。やりたい場所でやりたいことをやるパワーを分けてもらえるかも知れません。
写真提供:唐津ゲストハウス少女まんが館Saga
【Information】
唐津ゲストハウス 少女まんが館Saga
開館日 金土日祝(14:00~19:00)
HP https://jomakansaga.com/
住所 佐賀県唐津市大名小路5-2
電話 0955-58-9781(開館日のみ)
E-mail:info@jomakansaga.com
コラムニスト:田坂 朋子
福岡生まれ、唐津育ち。高校卒業後、近畿大学文芸学 部芸術学科演劇芸能専攻へ進学。マンモス大学の人の 多さに圧倒されながら、歌ったり踊ったり芝居をして 4年間を過ごす。卒業後は唐津へ戻りCATV出演、ラ ジオパーソナリティやイベント司会などを行う。現在 はFMからつでJOY☆ひる月曜・金曜、夕方チャンス 金曜担当。やんちゃ盛りの女の子2人の子育て奮闘中。